続・介護の現在進行形
“老い”を生きる、ってどういう感覚なんだろう。 “老いの不自由”を支えるって、どういうことなんだろう。“老いても地域で暮らす”って、難しいのかな。
利用者の思いとリスク
ふぅ、
今日は月一回のデイ職員全体会議の日。
いくつかの議題にまじって
意見が活発に出たケースがあったんです。
「認知症のケアに答えはない」
っていう人もいますけど、
そういうことで片付けてていいんかなぁ、
たとえ「答えがない」ように思えても
「今のままで良しとする」ことに
どうにもこうにも納得いかないんですよねぇ、僕は。
だから「答え」を見つけ続けたいんです。
うちのデイサービスは
京都府南部の中核市にあって、
40年ほど前に小高い山を切り開いてできた
住宅地の斜面に建っています。
Aさんはデイサービスの建物よりもさらに山側に住む女性。
息子さん夫婦と同居ながら敷地内の別棟に
“ポツン”と一人ぼっちで暮らしています。
家族事情は深く書けないけれど、
同じ建物には同居できない
家族にしかわからない“闇”があるようです。

で、そんなAさん、
ほとんど毎日のようにうちのデイサービスを利用してるんですが、
独歩なんですね、単独で来られるんです。
「お迎えに行きますから家で待っててくださいね」
って毎日のように言っても
てくてくと杖歩行で坂道を
最後は転がらんばかりに下ってきます。
Aさんの下肢筋力は低下傾向にあって、
しかも認知症により直近の記憶は
スルリと抜け落ちてしまうんです。
そんな光景をある朝見た作業療法士が言った一言で
Aさんの日常はガラっと変わってしまいます。
「いつこけるかわからんのに一人で来てもらってていいのか?」
という一言で。

さっそくケアマネ主導でカンファが開かれ、
さほど議論も深まることなく結論が出ます。
「転倒や事故に遭遇するリスクがあるので
 お一人で来られることのないよう
 家の門にカギをかけて出られないようにしよう」
という結論です。
ご家族は元々積極的にはAさんとの関わりを
持とうと思っておられなかっただけに
「デイの人がそう言うんなら」
という感じですぐに納得され、
「たとえ一人で歩いていて事故にあっても
 施設に賠償を求めることはしない」
と言われたようです。
ケアマネも「これで一件落着」と思ってたわけですが、
収まらなかったのが現場のケア職員たち。

毎朝迎えに行くと
施錠された門のところでしゃがみこんでいるAさん。
「なんでこんなことになったんやろう。
 もう30分以上もたってる。
 門を開けて行きたいところがあるのに行けない。
 この年になってこんな仕打ちにあうとは、、、
 情けないわ、もう死んでしまいたいわ」
と嘆かれるそうです。
職員たちは
「Aさんはきっと、私たちが迎えに来てくれるのを遠慮して
 私たちが迎えに来るまでに自分で歩いていかないと
 世話になっているのに申し訳ない、
 という思いがあるのではないか?」
とAさんの気持ちを読み取りました。
ならば、いっそのこと施錠するのをやめて
また以前のように単独で来所してもらってはどうか、
という意見が今日の会議の議題のきっかけです。

僕は、ケアの専門職として
リスクをどう把握し、
またそのリスクと利用者さんの思いとのギャップを
しっかり見据えた上で、
どのように援助していくのか、
施設や法人としてどのような援助がいくつでき、
どのような援助はできない、
とご本人とご家族に提示していくのか、
それこそが役割だと思うんです。
その議論なしに
「カギをかけるか、かけないか」
の2極のみの論議は無意味だと思う。

カギをかける、
薬で抑える、
紐で縛る、
そうした手法は、管理は簡単。
拘束があかん、とかそんな次元の話も大事だけど、
ケアという援助職を生業とするにあたって
「ああでもない、こうでもない」
とケアに工夫を試みなくなったら、
みんなで知恵を出し合うことを放棄したら
絶対にあかん!
と思うんですよね。

勤務シフトがすでに決まってるからできない、
と切り捨てるんじゃなくて、
僕らが少し工夫することで
Aさんの思いに寄り添うことはできないんやろか、
としがみつく。
早く迎えに行ってもきっとAさんは
それ以上に家を早く出てしまう、
と恐れるんではなくて、
とにかく一つずつAさんにとって良かれと思ったことを
やってみようや、と諦めない。
そんな気概とか青臭いことを平気で言い切れるんが
福祉で召し食えてる良さだと思うんですが、、、。

テーマ:私たちにできること - ジャンル:福祉・ボランティア

【2006/04/22 23:55】 | 認知症 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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63年生まれ、大阪府在住、京都府に通勤。ちなみに写真は僕ではありませ〜ん、セルメン知ってる?

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